春爛漫、四月。
新入生というには余りにもふてぶてしい二人が、ここ南高校に存在していた。
一人はすらりとした長身に色素の薄い髪、その恵まれた美貌で周りの視線を一身に集めている。入学式だというのにブレザーを着崩している姿はまるでモデルのようで、片一方の手をズボンに突っ込んだまま、新しい教室への廊下をゆったりとした歩みで進んでいる。その顔は好奇心に色づけされた笑みが浮かんでおり、きょろきょろと落ち着きなく周りを見渡す様は、まるで動物園に来た小学生のようだ。
それに反して、隣に並んだ眼鏡の少年は無表情で、口元は微かに不機嫌そうに結ばれていた。きっちりとした制服の着こなしは新入生らしかったが、どこか威圧感まで感じさせる彼には初々しい雰囲気など微塵にも無い。漆黒の黒髪はさらさらと流れるように艶やかだったが、触ろうとする猛者など存在しなかった。
「おい藤。あそこが学食だな」
「――桂木、今ぐらい黙ったままで真っ直ぐ歩けないんですか?」
「煩い。小姑め」
「煩いのは桂木でしょう?――まさか入学式で騒ぐとは思いませんでした」
「わはは、恐れ入ったか!」
「いえ、まったく」
峰藤は疲れたようにため息を付いた。桂木の笑い声を聞いていると頭痛がしてきそうだ。
今日の入学式、新入生代表で答辞を述べたのは入学試験で首席を取った峰藤だった(桂木は試験の成績はよくても内申が壊滅的だった)。母校、広松中学でも色んな意味で有名だった二人だが、桂木は別にしても、中学生の頃の峰藤には目立ちたいという欲求はなかった。どちらかというと身の回りの騒がしさに嫌気がして、高校生になったら殺伐とした中学校時代とは別れを告げ、静かに過ごしたかったのだ。しかし校長が立っている舞台への階段を登っている時に背中に受けた言葉で、峰藤は平穏になろうはずもない自分の高校生活を悟った。
「おい藤! 何気取っているんだ! つまらないぞ! 一発芸でもやれ!」
桂木の傍にいるという事、それはつまり波乱万丈と同義語だ。般若のような顔で振り返り桂木を睨みつけた峰藤を間近で見た新入生は震え上がった。
「あれが広松の桂木と峰藤か」と。
峰藤には不運な事に彼と桂木のクラスは一緒だった。制御の利かない桂木の面倒を見させられるのかと思うと、自然と顔は歪む。ああ、面倒臭い。
そんな峰藤の心中を知ってか知らずか、桂木はにかっと無邪気な笑みを浮かべる。
「藤の顔も見飽きたが、いいだろう。仲良くしてやる! 光栄に思え!」
「それはこっちの台詞です」
峰藤はぴしゃりと冷たい言葉を返しながらも、この男との付き合いが未来永劫続いてしまうのだろうと、うっすら予感していた。
つまり、腐れ縁とはそういうこと。
竹馬の友?
御礼&蛇足という名の後書き
ゆやさんに頂いた桂木&峰藤。制服と身長差に悶えてました。ゆやさんの書いてくださった桂木も峰藤もかっこいい! 改めて二人並べてみると驚くほど表情も纏う色も着方も対照的ですよね。もちろん共通する部分もありますが。そして二人の入学式の妄想をしてみました。あんな一年生入ってきたら目立つだろうなぁと思います。ゆやさん、本当に素敵なイラストをどうも有り難うございました!
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