メガネdeコント




「ねえ。あんたのカッコイイって言ってた高瀬君ってさあ、あれはでもメガネ男子としてはどうよ。顔は確かに小池徹平に似てるし良いんだけど。あのいかにも笑福亭笑瓶な黄色いフレームのメガネはないわー」
「え。なに?」
「でも彼はトレンドを取り入れてみたって言ってた? そうなの……ふぅん」
「まあ人の個性も様々だしね。アレで彼の個性が際立ったことは確かよね。っていうか光輝いちゃってるけどね」
「でもどうして、あの黄色いプラスチックフレーム!? せっかくの小池徹平がもったいないよっ。だって小池徹平って言ったらメガネが似合うタレント結構上位よ!? なのに、なのに。あのメガネが妙にマッチしちゃってて、高瀬君の顔見るたび変にドキッッってしちゃうでしょうが!」
「絶っ対あれ、心臓に悪い。そのうち心臓止まる人が出ちゃうって」
「はい? なによ。そんなことないって? だってあんたアレ、間近でみたら凶器だもん。笑い堪えるの必死だって。それだけでも心臓にかなりの負担だよ。重労働だよ」
「あんただって、本当はそう思ってるんでしょ――――って、えぇっ!!」


「そ。その笑福亭笑瓶バリの黄色いメガネッ。いったいあんた何処から出して……。っていや! キメ顔は作んなくっていいからっ」


「は? 彼とお揃いなの、キャッ(はあと)って。……あんた正気―――ではないわよね。そうね恋の病って恐ろしいわよね。で、あんたソレ恐ろしいほど似合ってないわよ」
「はい?」
「彼にそのメガネどこで買ったのか教えてもらったって? 一緒にお店まで行ってメガネ選びに付き合ってもらったって? 高瀬君との仲がもう急接近っ。メガネのとりもつ縁だよねーって?」

「あああ、あんたっ。その笑瓶メガネかけて、頬を染めながら乙女チックするの止めなさいよね! 気味悪いの通り越してぶっ飛んじゃってるわよ」

「いやまあ。あんたが良いならいいのよ……。親友だもんね。祝ってあげる。そのメガネ、見慣れてくると味わいあるよ……」
「うん? そうそう。まあいい感じじゃないの? ――チガウからっ!! けっしてキメ顔二割増で、そのうえポーズ決めろとか言ってないからっ。……だ、だからヤメテ。その笑瓶メガネかけてクイクイってフレームを上下に動かすのヤメテ」

「はあはあはあはあ。……あんたそれ恐ろしい凶器だわ。死ねる。笑い死ねる」
「――なによ?」
「えー。だってこのポーズが一番決まってるよねって、高瀬君と二人で特訓したって? 店のショウウィンドウの前で練習したのにって。あんたソレどんだけ羞恥プレイよっ!?」

「二人の仲が深まった愛のポージングなのにって?? イヤだからそのクイクイやめて……」


「―――はあ。うんわかった。モウ何も言わないよ?」
「うんうん。もうとことん行くとこまで行っちゃってよ。二人で愛の逃避行だろうが何だろうが、もういっそ潔いよ」
「あたしも一緒にやるかって? それは遠慮させて。――やだ、もちろん嘘に決まってるじゃん。これは高瀬君との愛! の行・為・な・ん・だ・もんっ。キャッ。……って、うん。もう止めないから」
「それに二人並んでダブル笑瓶メガネかけた姿も見てみたいしね。そしてクイクイポーズも見てみたいもんね。きっと動作もピッタリなんだろうね……ダブルクイクイ」



「この一人コント。ほんとうに受けるの?」

《了》


前項
作者 / 日向 逢