モノクロームのポートレートには、この世のありとあらゆる美を、神が凝縮して形作ったような美しい青年が写っている。
 それでも私が素直に見とれることが出来ないのは、この綺麗な面の皮を一枚剥いだらその下は傍若無人、傲岸不遜、そして最近はセクシーハラスメントの代名詞――桂木拓巳、その人に違いないということをよく知っているからだ。
 しかもキメ顔で斜め四十五度なところが、ゴルゴ並に狙いばっちりで、綺麗すぎて腹が立つ。

「――なに、この写真」
 机の上に散らばっていた写真を一つ掴みあげると、私は部室の中を歩き回っている紀子に聞いた。紀子は煩わしそうに顔をあげ、こちらを一瞥する。
「あぁ、それよく取れてるでしょ。私の副業の写真……会長には稼がせてもらってるわ」
 笑った紀子の表情が悪徳商人そのもので、私は顔を引き攣らせた。それでもやはりこれだけ造詣が整っていたら、写真を欲しがる人もいるのだろう――中身あんなんだけど。
 こちらを見つめる写真の桂木の目には、なにか面白がるような色が浮かんでいる。緩んだ口元は完璧な弧を描き、まるでその写真は生きているような活力を宿していた――どこか柔らかい表情をしているように見えるのは気のせいだろうか?
 ぼんやりしていた私は、欲しいなら一枚五百円ね、という紀子の言葉に我にかえった。

「高ッ! っていうかいらないし」
「あら、それで友達価格なんだからね。正規料金は八百円」
 ――この女……ぼったくりにも程があるだろう。
 写真を机の上に戻すと、私は紀子を睨みつけてから、新聞部の部室を後にする。

「……まぁ、あんたと一緒に居るときの会長の顔ばっかだけどね」
 ひらひらと適当に手を振りながら、紀子が最後に呟いた台詞は私に届くことは無い。


白黒のポートレート



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御礼&蛇足という名の後書き
 お神さんに頂いてしまった、ワタシトカレラ。の桂木拓巳のイラスト! 挑戦的な視線がセクスィーです。ってういうか、こんなに恥ずかしげもなくハートが似合ってしまう男子高校生ってなかなかいないと思います。ハートでもリボンでも面白いものならなんでもござれ! って感じですよね。
 お神さん、すごく素敵なイラストをどうもありがとうございました!

 お神さんのサイトはこちら → 往復書簡ノ中ニテ戯言ヲ