恋愛というのは惚れたら負け。
 だっていうけれども、一体全体、誰が勝敗を決めるのだろう。
 とかね、時々、私だってポエマー気取ってみるときもあるのですよ。



 だけど、それは真理かもしれない、と恋愛若葉マークの私は頬杖を付きながら思う。
 ゆったりと流れるような動作で、お茶を入れる結城さんの姿を見ながら、私は深い溜息を吐いた。
 すると、それに気づいた結城さんが振り返り、緩やかな笑みと共に首を傾げる。
 どうしたの? と、こちらを気遣うような言葉。
 ――だって、ほら、それだけでこんなにも心拍数が上がる。
 私は熱を放つ頬っぺたを抓りあげながらも、無理矢理笑みを返した。
 もしかしたら少し眉間に皺が寄っているかもしれない。
 この顔の赤みが、物理的なものからくるものだと、誤魔化せればいいと思う。
 訳もなく、泣きそうなのは痛みの所為だと。
 ぎりぎりと自分の頬を抓っていると、私の奇行に目を丸くしていた結城さんが、こちらに手を伸ばした。
 そして、私の手を包み込むように、大きな手を重ねて、力が入っている指を徐々に引き剥がしていく。
 そんなことしたら、可愛い顔に痣が出来てしまうよ、と結城さんは苦笑した。
 私の心は、ボクシングのサンドバック並みにもう痣だらけなんですけども。
 とかなんとかかんとかいったら、笑って流すんだろうかこの人は……だろうなぁ。
 私がぼんやりしながら物思いにふけっていれば、じんじんとした痛みを訴えていた頬に暖かいものが触れる。
 さらりと乾いた感触の男の人の手が、指が、肌の上を滑る。
 やっぱり、少し腫れてるね、と結城さんは呟いて、濡れたハンカチを差し出した。
 お礼を言いながらそれを受け取って、私は火がついた顔を伏せる。

 唐突に体に――心に触れない欲しい。

 冷たいハンカチで顔を包みながら、私はしばらく結城さんの顔が見れなかったのだ。


不意打ちすぎだろ…!



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御礼&蛇足という名の後書き
ゆうきさんに頂いたワタカレ。のイラスト! ヒロインの涙目から自動的に結城さん番外編となりました(笑)マグカップのカラーとか、ゆうきさん、めちゃくちゃ芸が細かいですね! 流石! そして、何故かポエムめいてしまうのは、ゆうきさんのイラストマジックだと思います。時間系列いつかわかりませんが、メランコリックなヒロインでした。ゆうきさん、本当に素敵なイラストをどうも有り難うございました!