※ この作品は漫画(それいけ☆変人クラブ〜VSモテメガネ編〜)の後日談です。

それいけ★新聞部員すずめちゃん〜メガネ騒動を追え!




みなさまこんにちは!
わたしは白樺美術高校・新聞部員・1年の平野すずめちゃんですv
トレードマークは蝶結びのネクタイ(校則ギリギリOK)のきゅーとな16歳乙女ですよ☆

さてさて、本日はこのすずめちゃん、昨日学校を騒がせた幻の“メガネ騒動”を追って白樺美術学校もといシラビーの裏生徒会といっても良い「非常識という芸術を極める会」およびへんた・・・変人クラブにお邪魔しています!
他校の皆さんのために簡単に説明すると、このクラブは大阪を発祥の地とする「具体美術」にあこがれたちゃった女子高生が“自分たちもバカやりたいなー”という理由のもと発足した、アイタタなごっこ遊びを愉しむクラブです。ちなみに「具体美術」はもっと崇高な理念の下、“傍から見たらただのバカ”みたいな作品(泥と格闘するパフォーマンスとか障子のような壁を何枚も連ねてそこを駆け破っていくパフォーマンスとか)を大真面目に作っている非常に現代芸術では名高いグループですので、興味がわいたらかるーくネット検索してみてくださいね☆
ついでに我がシラビーには似たような部に「駄々っ子クラブ」というのもありまして、これは「ダダイズム」という理念にあこがれちゃった(以下略)・・・、気になったら面白いので調べてみてくださいねー☆

さてさて、話がそれちゃいましたが、何はともあれ現在すずめちゃんは変人クラブのクラブ室で、まったり某真っ赤な暴君をぽりぽり食べております。無論、水なし水分なし。すずめちゃんの目にはうっすら汗が浮いておりますが、安心してください、すずめちゃんは強い子です!こんな「京都の秘儀!ぶぶ漬けいかがですか(お前に話すことなんかねーよ!山に帰れ)攻撃」になんて負けません!自分で舌をちょん切りたいくらい痛いですけれども!

「ぴー、から・・・おいしかったですー。あの、お茶菓子全部食べちゃいましたが・・・」
「あら、ごめんね?まだまだあるからどんどん食べてって」

部長さんにお話を、と続けようとしたところで素敵なお団子頭のみたらしさんがそっと某真っ黒い魔王様を二袋ほど差し出してきました。
ま・・・負けません!す、すずめちゃんは、すずめちゃんは・・・強い子です!
水分なら、目の端に溜めております!!ジョロキアなんて勇者すずめちゃんの手にかかればいちころです!

「・・・別にそんなに冷や汗流しながら食べなくても良いのよ?どうぞ校庭裏の自動販売機まで走ってもらってもかまわないのに」
「ぴっ、イエイエ、すずめひゃんは辛いのだいひゅきなんでお気になひゃらないでくだひゃい」

うう、あまりの辛さに上手く口が回りません。セーターを着込むほどに寒い11月の最中だと言うのにすずめちゃんの額を汗が滑っていっています。恐るべし、暴君&魔王のコンボ!
しかし、ここでみたらしさんの甘い誘惑に負けてこの部屋を出たら最後、今回のミッションはもう一生達成できなくなってしまいます。私の前に「トマソン愛好部」もとい写真部の方々が取材にこの難攻不落の変人クラブに特攻を仕掛けたそうなのですが、あえなく惨敗。廊下で死屍累々と倒れ付す写真部の方々の隣を、すずめちゃんは一人で越えてやってきているわけです。ちなみに「トマソン愛好部」は芸術家赤瀬川源平らの発見に感銘を受けちゃった(以下略)。ついでに説明すると超芸術トマソンの理念に基づき、主にこの方々は屋外写真を主とする方々ですが、“意味があったはずなのに無意味になったもの”を愛でている為今回の騒動を取材しようとしたようです。
って、あらら、また話が脱線しちゃいました。もう、すずめちゃんのおしゃべりさんっ☆
ですが、お話したように変人クラブの皆様は大変な秘密主義でいらっしゃいます。
いえ、基本的に変人クラブの皆様は目立ちたがりな方々で構成されているのですが、変人クラブの正式名称である「非常識という芸術を極める会」の名において、「極められなかった試み」については硬く口を閉ざされる傾向にあるのです。芸術家としてのプライドといいましょうか、半端なものは発表したくないというポリシーなのですね。同じ芸術家の卵、白樺美術学校の生徒として見習うべき考え方ではあります。

しかーし!!

ここで引き下がれないのがこのすずめちゃんが属する新聞部・正式名称「俗物愛好部」です。この世の中を回しているのは崇高な理念の下でしか動かない聖職者や芸術家ではなく、政治家に代表される俗物的な人間です。お金になるのは偽善的なエコだの○○救済といった話ではなく、有名人のゴシップだの漫画や映画といったサブカルチャーだの、俗物が好むものなのです!遠くの戦争の話より、隣の奥さんの不倫話のほうがぶっちゃけ面白い、そんな世の中なんですね。よって、すずめちゃん含む「俗物愛好部」は俗物が好むものを収集し企画し調査し集計し発表し、同時に俗物的な考えを研究し学内に浸透させるといった活動を行っているのです。もうそのまま、「俗物」を愛する部活であり、自らを俗物と認め、より俗物に落ちていこうとする“芸術活動”をしているのです。その活動の主な媒体に校内新聞の発行があり、対外的には新聞部として認識されているのです。将来的には放送関連も牛耳る予定ですが、現在「色聴研究部」が放送部として幅を利かせているので実現には至っておりません。打倒!色聴研究部!!
・・・はっ!!ついつい熱く語っちゃいました。他校の皆さんにはこんなうんちくはちょっとつまらなかったかもしれません。すずめちゃん、反省です。ごめんなさい。あまりの辛さに現実逃避しちゃってました。世界一からい唐辛子を使っているだけあって某真っ黒い魔王さまは必殺技繰り出しすぎなんです。うう。

「ねえ、ちょっと本当に大丈夫なの、すずめちゃん?焦点あっていないわよ?」
「すずめひゃんは俗物を愛しておるのれすー。ごしっぷらぶー!!他人の不幸は蜜の味―!!」
「いやもうホント帰って?遠まわしに嫌がらせしたのは謝るから」
「かへりましぇんー!!すずめひゃんはぶってきひょうこを得るまではかへらないのれすー!!」

「そこまでしてこの子達の活動を追うなんて・・・新聞部もバカよねぇ」

ぷぷっというこの失笑の仕方は・・・もしや生徒会長さまではないでしょか!?あわてて朦朧としてきつつある頭を声のしたあたりに振り向かせると、実にすばらしい笑顔を浮かべた生徒会長様が、ペットボトルをひとつすずめちゃんに下賜してくださいました。
助かりました。このメガネ騒動インタビューを終えたなら生徒会長様特集を組みましょう!!
こくん、と喉を鳴らして飲み干し、一息ついてお礼を申し上げたところで我が麗しの生徒会長様はおっしゃいました。

「いえいえ、どういたしまして。それトイレの水だけれど、お口に合った様で良かったわ」
「ぴーーーーっっっ!!???」
「うふふ、嘘よ?」

・・・・・・生徒会長様はお茶目な方です。それも嘘よ?なんて一言は聞かなかったことにいたします、ええ。す、すずめちゃんは強い子、なんですからぁっ(涙目)

「せ、生徒会長様は何の用でこちらにいらっしゃったんですか?すずめちゃんは昨日のメガネ騒動の件でこちらにお邪魔させていただいているんですが」
「ああ、昨日の違反物返還するついでに一仕事頼もうと思って。本当にしょうも無いものばっかり集めてるわよねー、ここの変態どもは。見てよ、コレ」
「待ちたまえ、生徒会長殿」

すずめちゃんが生徒会長様の手元を覗き込もうとした瞬間、先ほどから席をはずされていた変人クラブ部長のツインテールさんが現れました。生徒会長様相手にすごい強気の態度です。なんだか背後にどす黒いオーラのようなものが立ち上っているのが見えます。な、何なんでしょう。生徒会長様特集のついでに変人クラブとの確執をリサーチして持ても良いかもしれません。帰ったら部長に提案しなくては。

「人のものを勝手に衆人の目にさらすのはプライバシーの侵害ではないかね?」
「たかがガラクタじゃない?目くじら立てるほどのものではないと思うけれど?」
「人権侵害をここに主張する」
「うふふ、隠すから探られるのよ。別にゴシップと言うほどのものでもないでしょうに」
「我々のポリシーに反するのだから、断固拒否する」
「なら、私はそれを拒否するわね。その方が面白いし。ほら、すずめちゃん、コレ」

ぽん、と手渡された物はどうやらプラスチックでできているらしくとても軽いです。カチャカチャと細長いものが折り重なって・・・・と言うか、メガネです!しかも奇抜な。もしやコレは件の・・・!!??
ばっと見上げると会長様はすがすがしい笑顔を、部長さんは苦々しい顔を浮かべていらっしゃいます。

「そうそう、昨日の幻のメガネよ、それ。ふたつ除いてぜーんぶ度無し。校則違反だから没収させてもらったのよね。こんなしょうも無いことでも騒動になるんだから、ウチの連中って本当に暇よねー」
「人の企みを潰した張本人が何を言うかー!!リコールをかけるぞ!」
「うふふ、できるものならね?」

もう一度手元に視線を戻してメガネを検分します。パーティーでよく見られる鼻眼鏡(ひげ付)、前が逆に見えないのではと思われるレンズがフレームの柵になっているメガネ、髑髏やら目玉が浮いて見えるサングラスに、虫メガネが二つ。確かに得た少数の目撃者の言葉と一致します。・・・本当にこんな役に立たないメガネを堂々と着けて電車に乗って学校までやってきただなんて、変人クラブの方々って変態ですね★さすがに裏生徒会と言われるだけあって、やることが地味に派手です。すずめちゃん、軽く尊敬しちゃいます。

「生徒会長様、ご協力ありがとうございます!あの、コレは記事にしちゃってもよろしいでしょうか!?」
「いいわよー。できるだけ面白可笑しくしちゃいなさいな。この子達がバカなのは周知の事実なんだし、問題ないでしょう」
「生徒会長殿・・・?本人の許可なく話を進めないでいただけないか?」
「学校を取り仕切るのは生徒会長の仕事で、生徒会長はこの私。学校のすべては私のもので私のシモベよ。諦めなさいな?」
「ええと、では変人クラブの皆様方、コレを着けて並んでくださいますか?写真撮らせていただきますんで」

ちゃっかりデジカメと集合写真用に椅子を配置して、すずめちゃんは進言させていただきました。時間は金なり、は新聞部の合言葉です。白樺日銃学校の親玉、生徒会長様がいるうちに頼めることは頼んでおかないと、また参謀長のようなみたらしさんに追い返されかねませんしね。

「だって。ほら、とっとと着けて撮ってもらいなさいな」
「断る!」
「あら、良いの?このしているのよ?」
「む?」
「校則の書き換えを提案してあ・・・」
「そこの蝶ネクタイ!とっとと写真を撮ると良いぞ!ほれ、皆の衆早く準備をせんか!」
「・・・げてないわよ?」

最後の生徒会長様の一言はどうやら部長さんの耳には届かなかったようです。おかげですずめちゃんは写真を撮った上に、詳しい経緯までゲットすることができちゃいました。生徒会長さまさまです。と言うか、変人クラブの皆さんって本当に変わり身早いですねー。忍者になれちゃうんじゃないでしょうか。
しっかり御礼を生徒会長様と変人クラブの皆様方にして、すずめちゃんは無事、ミッションを終えることができました☆部室に帰って早急に原稿を仕上げなくては。


記事を発行してから3ヵ月後、白樺美術学校の校則が変わったことは、
・・・・・記事にするまでもありませんよね☆

《了》


前項
作者 / お神