00話 / 金城千夜理(16)の独白
金城千夜理(かなしろちより)は一人っ子だ。
千夜理だって小さい頃は人並みに寂しさを感じることがあったし、兄弟のいる子が羨ましかった。兄弟――特に可愛い弟が欲しいと、母に駄々をこねた事もある。しかし”子供”に分類されなくなった今では羨ましさを感じる事はあっても諦めもつくというものだ。
手のかかる幼馴染がその代わりのようなものだったし、両親が千夜理の十三歳の誕生日に生まれたばかりの豆柴を貰ってきてくれたから、千夜理にとっての兄弟は犬のチロルを指す。そして、今現在にいたるまで弟も妹も生まれなかったから千夜理に人間の兄弟はいない。
ここまではいいだろうか。
イフ。もし。仮の話。
考えたくも無いけれど両親のどちらかが不貞を働いて、腹違いの兄弟が居たとしよう。
もしも万が一にそうだとでも優性遺伝としての黒髪が混じっているはずの兄弟はこんなに綺麗な銀髪をしているわけはないし、あまつさえ――。
「あっ、あに、うえぇぇ! あにうえぇ! やっと、やっとやっとみつけましたっ!」
千夜理はY染色を保有していない、れっきとした雌だったはずで、ある。
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