三十三話 / 降り止まぬ雨


 長い睫はくるんと綺麗にカールを描き、そのアーモンド形の瞳は興味深げにこちらを観察している。その瞼の上を彩るのは薄い紫色のシャドウだ。彼女はぷるんと熟れた唇を尖らせながら身体を揺すった。しなやかな腕を絡められた桂木は気にする事も無く、いたって普通の表情で漫画を読んでいる。
 ……なんだろう、この状態は。
 目の前にあるのはふわふわのスフレ。狐色に焦げ目のついたそれは、食べられる事を望んでいるようにも見えたが、いかんせん、食べる側の精神状態がそれ所ではない。
 ここは全国チェーンのファミレスの端っこ禁煙席、ここまではオーケィ。自分を取り巻く環境はいたって平凡だ。――目の前の二人を除けば。
 にこにことこちらを見返す彼女の視線には邪気は無い。私の「誰なんだろう」との疑問を含んだ表情に、彼女はパチリと音が出そうなくらいのウインクをしながら自己紹介をし始めた。
「私の名前は西条瞳よ、職業はねぇ……愛の狩人やってるわ!」
 八時丁度というか、むしろ今すぐ旅立っちゃいたい勢いです。
 どうもと挨拶をするふりをしながら、私はそんな気持ちを表していただろう顔をそっと伏せた。一人盛り上がっている瞳と、それと相反してテンションはどんぞこの私、漫画に集中していてこの場をフォローしようともしない桂木。
 ああ、本気で帰りたい。そして脳内から記憶を抹消したい。
 私はこの状態に陥った事を激しく悔いていた。何となく時間を稼ぐためにホットミルクティーを含んでみるが、紅茶のパックで入れられたそれは、結城さんのところですっかり肥えてしまった舌に渋みだけを残す。
 きゃらきゃらしている彼女を前に冷や汗をかきながら言葉を選んでいると、漫画をぱたんと閉じる音がした。桂木がようやく読み終わったみたいだ。この微妙な空気を払拭してもらうために、私は僅かな期待を込めて桂木に視線を送った。すると桂木あろうことか、のうのうと、のたまったのである。
「この漫画の新刊が出てるらしいな、買ってくる」
 ――ちょっとまて。この状況で置いていきやがりますか、この男は。
 私の動揺を気にするはずも無い桂木は颯爽と立ち上がる。もちろん、私は必死で引きとめにかかった。
「ちょ、い、今ですか?」
「ああ、俺のモットーは『思い立ったら吉日』だ」
「それ、たった今作ったんでしょう!?」
 私は反射的に遠ざかりかけた桂木の腕に飛びついた。流石に桂木も少し驚いたようだったが、そんなものは関係ない。とって喰われそうな相手と一緒に置いていかれては堪らない。それぐらい私は必死だったのだ。
 私は無言でがっしりと掴んだ腕を引っ張る。それでも人を思いやる事にかけては赤ん坊並の桂木は首を傾げながら私に翠色の双眸を向けた。
「いったい何だっていうんだ」
「……会長、こんな所に置いていくのだけはやめて下さい! 気まず過ぎます!」
 こしょこしょと声を潜めながら、桂木に耳打ちをする。ちらりと瞳に視線をやってみたが、彼女はにこにことしながら見ているだけだ。……絶対に聞えていると思う。
 私の必死の懇願に、桂木は考え込んでいたが、直ぐに合点が言ったようでにっこりと笑った。それに私がほっと息をつくと、私の身体を引き剥がしながら、長身の彼はまるで聞き分けの無い幼稚園児に言い聞かせるみたいに視線を低くした。

「よしよし。――俺がいなくて寂しいのか? 馬鹿だなぁ。忠犬たるもの、主人を待ててこそ一人前というものだ! さぁ、いい子にして待ってるんだぞ?」
「ちっげぇよ! 大いなる誤解です! それに私は会長のハチ公になった覚えはありません!」
 私が必死にひき止めようとすれば、さらりと大きな手が優しく頭をなでていった。その温かい掌に気がそれて、私は一瞬反応が遅れてしまった。そして気がついた時に伸ばした腕は虚空を掴み、桂木の背中は遠ざかっていく。
 そして結局、「有難うございました〜!」の声を受けながら桂木は自動ドアの向こう側に吸い込まれていったのである。
 ――ジ・エンド。
 私が脱力し、肩を落としていると、瞳のくすくす笑いが耳に入ってきた。そのからかう様な空気に少しだけむっとして、私は正面に座りなおして瞳と視線を合わせた。
「……なんで笑ってるんですか?」
「二人とも可愛いわねぇ。たっくんもあんな顔ができるなんて。大人になったものだわぁ」
「はぁ。それは――どうも」
 その保護者のような台詞に一気に怒りを挫かれた。なんとなく腹を立てていた自分が子供っぽく感じられて、私は気まずさを誤魔化すために美味しくも無いお茶に手を伸ばす。
 私に穴を開ける勢いで見つめていた瞳は唐突に、ぽん、とカラフルなネイルが施された手をたたきながら、やっと謎が解けたとばかりに嬉しそうに笑った。それは華が綻んだみたいに艶やかで美しい。しかし華といっても、毒もってるやつだろうけど。
「あー! あなた! あの時、コンビニにいた子じゃない? たっくんと同じ学校の子だわって思ってたのよねぇ。あぁ、やっとスッキリしたわ。そういえばどこかで見たことあると思ってたの!」
「あ、あの時の」
 そういわれてみれば、あの時、コンビニにいたセクシーダイナマイトな女性に面影が重なる――それと同時にふとあまり思い出したくないような記憶も相乗効果で思い出してしまったが。
 あの時、瞳は誰かと一緒にいたのだ。そう。恋人と思われるであろう人と。
 ごくりと私は唾を飲み込んだ。夜だったし、故意にそちら見ないようにしていたから、瞳と一緒にいた人物をちゃんとは確認してはいない。桂木と瞳の雰囲気は気安く、親戚のようであるが、名字は違うし、その上、瞳とはそれほど年が離れているようにも見えない。ちゅーちゅーと蝶々のようにグァバジュースをストローで飲む瞳に私は恐る恐る口を開いた。
「瞳さん、私の記憶が正しければ――コンビニでいちゃついていたような。あれって、かいちょ……桂木先輩じゃなかったですよね?」
「やだーぁ! 見てたの恥ずかしい! あれはあっくんよぉ!」
 きゃ! と効果音が聞えてきそうな仕草で彼女は両手で口を照れくさそうに隠す。……鬼可愛い。
 「あっくん」ということは、最低の結果「桂木恋人説」は避けられたわけだ。
どっと張り詰めていた緊張感が切れて、私はそれならば親戚ですかと続けようとした。それを遮るように瞳は、私の唇をしなやかな指でそっと押さえた。行き成りのとんでもない行動に私は勢いよく後方にのけぞった。
「ぎゃっ!」
「あなたばっかりずるいわぁ。今度は私にも質問させて?」
「ど、どどどどうぞ!」
 愛の狩人はうふふと微笑みながら指を離した。
 ――この人、なんだか怖いよっ! 無駄にフェロモン振りまいてるよ!
 桂木や峰藤とは違った意味で苦手な人種を前に、私はびくびくしてしまうのを誤魔化すためミルクティーを含む。瞳は指をぴんと立てて聞いた。その艶やかな唇が動くのを私はみつめていた。
「あなた、たっくんの彼女さん?」
 ごくり、と飲み込みながら、私はきっぱりと首を横に振った。すると、瞳はなぁんだ、と詰まらなさそうに唇を尖らせた。
「まぁ、あなた処女っぽいものねぇ」
「ぐふっ」
「あらぁ、可愛い反応!」
 瞳は面白い生物でも見たかのように眼を輝かせる。私といえば、彼女の身も蓋も無い言葉に咳き込み、その拍子に喉から鼻にミルクティーが逆流した。つーんとした痛みを我慢しながら、私は鯉の様に口をぱくぱくと閉じたり開いたりするしかない。
「な、ななな」
「なにぃ?」
「何でそこに繋がるんですかっ!」
「あら、男と女が一緒にいて、それ以外にすることあるぅ?」
「ダイレクトすぎますっ!」
 意味も無く頭がかっかとして、私は紅茶をがぶ飲みした。瞳はいたって普通の事を言ったのだという雰囲気。……なんというか価値観が違いすぎて、まるで宇宙人にでも遭遇した気分である。
 オーケー、オーケー、彼女は人間というか愛の狩人なのだ。平常心、平常心。
 すっかり瞳にペースを崩されていた私はそう自分に言い聞かせて、なんとか別の話題をふった。
「西条さんこそ、桂木先輩と結局、どういった関係なんですか? ご親戚とか?」
「んー、関係? あえていうなら――肉体関係ってやつかなぁ」
 ミルクティーがぽかんと開いた口からぽたりぽたりと漏れた。
 あぁ、垂れてるわよぉ。と瞳がかいがいしくナプキンで口元を拭いてくれた。あぁ、どうもご丁寧に。――じゃなくて。
 今、とんでもないことをさらりと言った様な。
 なにがショックかわからないまま、私はがんがんと頭痛がしてきたこめかみをゆっくりと押さえた。なんだか両親の濡れ場を見てしまったような衝撃である。しかも瞳の言葉は現在進行形だった。
「じゃあ――彼氏さんとは?」
「もちろんあっくん命〜! たっくんとは割り切った関係だからぁ。あら? あなたもしかしてたっくんの事が好きだとか? いやーん。初々しい恋バナっていいわよねぇ」
 そのあっけらかんとした態度に激しく違和感を感じながら、私は口を開く。
「……桂木、先輩の事は、好きじゃないんですか?」
「好きぃ?」
 瞳は思いも寄らぬ事を聞かれたとばかりに、くるりと目を回してから、弾かれたように笑い出した。
「あははは! たっくんとはそういう気持ちはさっぱり無いわぁ。惰性で続いているから、もしあなたが嫌ならすっぱりやめるわよぉ?」
「……会長には、彼女がいるんです」
 私は堪らずにそう言ったが、瞳は初めて聞いたとばかりに目をぱちくりさせる。
「あらぁ、それは知らなかったわぁ。――彼女って、本当にアナタじゃないのぉ?」

 その後も話はしていたようだったが、打ちのめされたいた私はその内容をまったく覚えていない。瞳は用事があるらしく、桂木が戻ってくる前に帰ると言い出した。別れ際に渡された名刺には、あるホステスクラブの名前が書いてあり、私は「愛の狩人・ヒトミ」の文字をぼんやりと視線でなぜる。瞳は「来てねぇ、サービスするからぁ」と言って、別れ際にホッペにチューをした。そのぷにゃりとした感触にも、私はまったくの反応を返す事が出来ずに、ただ首を縦に振っただけだった。


 私は俯いて席に座っていた。十五分はそうしていただろうか。ショックなのが通り過ぎると段々と誰にも向けようの無い怒りがふつふつと湧いてきた。桂木が誰と付き合おうが関係を持とうが、私の知ったことでははない。しかし、桂木が今付き合ってるのは美登里だ。あの幸せそうな美登里の笑顔を裏切っていたのかと思うと、やはり許せなかった。
 私は伝票を引っつかみ、店員をびびらせるほどの勢いでお金を払うと外に出る。書店はどこだろうかと、視線をめぐらせると丁度、向こうの方に色素の薄い髪の毛をふわふわと跳ねさせながら歩いてくる男が目に入った。私は足音荒く、目標物に向かって歩き出した。一歩、二歩、三歩。
 私の姿に気がつくと、桂木は表情をにっこりと嬉しそうに緩めたが、私の様子にそれは訝しげなものへと変わる。そして私が思い切り手を振りかぶると、桂木はわけもわからないながらも軽やかにそれを避けた。
「なんだ、2C新しい遊びか?」
「避けないで下さいっ!」
 一発、叩かなければ。という妙な使命感で私は頬を狙ったが、私にやすやすと叩かれるような鈍い運動神経の桂木ではない。適当にあしらわれた私は、脳みそが溶けそうなくらい憤慨しながら桂木を睨み付けた。
「何を怒っているんだ?」
「西条さんの事です」
「あいつがなにかしたのか?」
「違います! 会長が二股かけてたからですっ!」
「二股?」
 まったくわけが解らないという様子の桂木に私はますます腹がたった。突き抜けるような怒りがうねうねとした波となり身体を突き動かす。私は声は一オクターブは低くなった。
「会長は美登里先輩と付き合ってるのに、西条さんと――関係していたって聞きました」
「それがどうかしたのか?」
 さらりと肯定されて、今度は頭が真っ白になった。
「美登里先輩は会長の事が好きなんですよ? そんなことされてたって知ったら傷つくに決まってるじゃないですかっ! 会長のその態度は真剣に恋をしている人を馬鹿にしています!」
 それはあくまでも二人の問題で、私が首を突っ込むのはただのお節介だった。
 しかし、 あんなにも一生懸命に恋して、嬉しそうに、楽しそうに頬を染めていた美登里の顔が悲しみに歪む所なんて見たくない。興奮の余り息切れしている私に、煩そうに桂木は聞く。
「お前には関係ないことだろう。何でお前が怒るんだ?」
 ぶちん、とどこかが焼ききれた音が聞えたような気がした。
 信じられない。最低。大っ嫌い! 女の敵! という言葉をエンドレスで繰り返しながら、私は踵を返して走り出そうとした。しかし桂木はその素晴らしい反射神経で私の掌を捕まえる。
「触らないで下さい!」
 さっきはあんなに温かく感じられた掌に触れられたくなくて、私は渾身の力でそれを振り払っていた。
 バチンと音が出るほど強く跳ねつけた掌。
 思った以上に力を入れてしまった自分にはっと我に返る。微かに赤くなっている手の甲を摩りながら、すっと桂木の翠色の双眸がほそまった。
 くだらない。
 誰かがそう言った。
 聞いたことも無いほど硬質な声はぞっとするほどの冷ややかだった。それが桂木のものだと自覚した時には、全身の神経は柔らかな唇の感触へと集まっていた。ぶにゃりと肉の塊でも押し付けたような生々しい感触が気持ち悪い。頭は麻痺したようにびりりと痺れ、今の状態を把握せよとの命令を無視している。翠色の瞳がありえないほど近くにみえ、私は驚愕で目を見開いた。掴まれた手首が痛い、と思った瞬間には突き飛ばされるように離され、私はよろよろと後退した。呆然としながら見つめる私に、桂木は蔑むような視線を向けた。温度を伴わない翡翠色は凍らせたように鋭い。

「こんなものただの皮膚の接触だ。恋なんてしてなくても出来る。顔の皮一枚で好きだと言っている奴らが何をどう感じようがどうでもいいだろう。人を束縛して干渉するのが2Cの言う「恋」か?」
 そこで桂木は言葉を切り、艶やかな微笑を浮かべる。それは人形めいていてこの世のものとは思えないぐらい美しかったが、底冷えがするぐらい怖かった。

「だとしたらそれはつまらないし、最高にくだらない」


 私はぼんやりと下を向いて歩いていた。ぐちゃぐちゃになった頭は正常に働いていなようだった。桂木のこと美登里のこと瞳のこと、そして結城さんのこと。くだらないと言った桂木の瞳に、美登里だけでなく私の恋心まで否定されたような気がした。
 そのうちに太陽もすっかりと姿を消して真っ暗になった空が耐え切れず泣き出した。めそめそと湿っぽく雨は私の全身を濡らしていく。
 ひとりでに足は進んでいたが、自分がどこに向かっているのかも解らなかった。ふと、顔を上げると、目に飛び込んできた風景には見覚えがあった――結城さんの喫茶店だ。少しだけ笑ってしまったが、その声は妙に擦れていた。
 カラン。と軽やかな鐘の音が耳朶を打った。喫茶店から出てきた人物は濡れ鼠のような私に怪訝そうに視線をやる。

「――何をしているのですか」

 それは峰藤だった。
 なんでこんなみっともない所ばかり見せてしまうのだろうか。私は改めてタイミングが悪すぎる男を忌々しく思った。峰藤は黒い折り畳み傘を取り出すと、水をはねさせながらこちらに近づく。どうやら雨が遮られた雰囲気から、この男が傘を掲げてくれていることがわかった。それにお礼を言う元気も無くて、私は峰藤に軽く頭を下げた。
「何かありましたか」
 峰藤の口から聞えるのは嫌味っぽさの無い静かな声。私は首をゆるゆると振り否定した。少し水滴がついた眼鏡の向こう側で峰藤の目が歪む。 それがまるで私の事を心配しているかのように見えて、私は少し動揺した。
「じゃあ何で泣いてるのですか」
 頬を濡らすものの存在に気がついたのは、峰藤に言われてからだった。それでも認めるのが悔しくて私は減らず口を叩く。
「……雨です」
「そうですか――結城さんの所へ?」
 峰藤は喫茶店へとちらりと視線を移す。それに私は顔を強張らせながら首を振った。こんな情けない所は結城さんに見せたくない。
 峰藤は深いため息を付きながら、糊の利いたハンカチを私の手に押し付ける。それに私が戸惑っていると、無表情で「酷い顔していますよ」と痛いところを指摘した。私は何もいえなくてぎゅっと押し付けられたハンカチを握りつぶした。
 何も聞いてこない峰藤に感謝した。でも聞いて欲しいと思っている自分がいることにも気付いていた。そんな自分がとんでもなく弱いようで嫌だった。桂木の秘密を知ってしまった後悔。そして美登里に対する罪の意識。そんな矛盾がぐるぐると私を袋小路に追い込む。
 落ちていた沈黙を唐突に破ったのは峰藤だ。
「――これからどちらへ?」
「帰り、ます」
 そう言ったはいいが、身体の動きは鈍く、ふらふらする。切れそうな神経を手繰り寄せながら、私は峰藤を見上げた。
「……副会長、では、さようなら。ハンカチ、洗って返します。どうも」
 精一杯の虚勢を張り挨拶すると、私は背を向けて歩き出した。ずしりずしりと重たい足取りで遠ざかる。背中に峰藤の視線を痛いほど感じたが、それを振り切る余裕も無い。今は兎に角もベッドが恋しかった。泥のように眠り、何もかも忘れてしまいたかった。今日一日が夢であればよかったのに、と心の中で願っていたのかもしれない。
 冷たい雨に打たれながら五十メートルも進んだ所だろうか、ふと雨がやんだ。

「貴方という人は……本当に馬鹿としか言いようがありません」

 桂木とは違った冷たい掌がそっと遠慮がちに私の手を掴んだ。傘を差した峰藤は家まで送ります。と有無を言わせない口調で言った。それを振り払う気力も無くて、私は無言で牛馬のように引っ張られる。それでも峰藤は私の歩調に合わせてくれているようだった。私は絶えず頬を濡らす「雨」を拭う事もできず、家まで歩き続けた。

 雨は、まだやみそうにも無い。



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