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 どすーん。
 アリスは固い土の上に尻餅をつきました。その痛みにアリスはお尻を押さえながら声無き悲鳴を上げています。穴は結構な深さでした。それでもアリスに怪我一つなかったのは運がよかったのでしょう。峰藤は軽やかに着地するとうずくまっているアリスを一瞥し、鼻で笑ってから、あくまでも落ち着いた足取りで穴の奥へと進んでいきました。
 痛みに苦しんでいるレディを放置したばかりか、手をかそうともしないなんて、あのうさぎ野郎、丸焼きにしてやる! とアリスは、穴へととびこむ前の同情心をかなぐり捨てて決心しました。そしてへっぴり腰で立ち上がると、よろよろとした足取りでうさぎを追いかけます。
 穴を進んでいれば、いきなり目の前が明るくなりました。暖炉にソファーにテーブル。こんな穴倉の中に立派な部屋がある! 驚いているアリスをよそに、でかい態度とは相反して身体はミニマムな峰藤は小さい扉を潜ります。そしてばたんと音をたてて扉はしまってしまいました。ヤンキー座りでアリスは扉のなかを覗き込もうとしましたが、昨今の危ない世の中では鍵のかかっていない扉のほうが珍しいので、その扉はびくともしません。すっくとアリスは立ち上がると、某蹴球漫画のようにありえないほど足を後ろに振りかぶりました。

 どかっ! 

 痛みの余り痺れた足を抱えながら、アリスはうさぎのように飛び跳ねました。思ったよりも扉は硬かったのです。
「うーん、どうしよう」
 アリスは自分の家の事を思い浮かべてみました。留守の時、スペアの鍵はべたに郵便受けの中に入っているものです。しかし周りには郵便受けはないですし、もちろん机の上にも鍵はありませんでした。そしてぐるぐると辺りを見回していたアリスにあるものが目に入りました。鉢植えです。それの下はベタな隠し場所第二候補でした。そっとアリスは鉢植えを持ち上げてみます。

「かぎ! げっとだぜー!」

 あいにくそれは無機質でしたので「ピカピカ!」とは鳴きませんでしたが、アリスはぴかぴかと輝いている鍵を手に入れました。次のダンジョンに進めるフラグが立ちました。ちなみにアリスの脳内では峰藤うさぎがラスボス認定でした。
 がちゃりと扉は音を立てて開きます。明らかに小さい入り口にアリスはそろりそろりと足を突っ込んでみました。腰の辺りまでゆっくりと進みましたが、どうやらお尻がつっかえるみたいです。
「……ふっ、さっき食べたポテチが裏目に出たか」
 アリスはずいぶんと見苦しい負け惜しみを言いました。足を引き抜くとアリスはふたたび考え込みます。ぽくぽくと木魚のような軽い音が頭の中で聞こえました。つまりアリスは一休さんになりきる事でいいとんちをきかせた答えを思い浮かべようとしていたのです。

 ぽくぽくぽくぽく……ぐーきゅるる。

「……お腹すいた」
 にわか一休は空腹だと騒ぎ始めたお腹を抱えながら、部屋の中を物色しはじめました。備え付いていた棚をあされば、そこにはクッキーの箱が。RPGの勇者の様なずうずうしさでアリスはクッキーに手をつけます。

 ばりばり。むしゃむしゃ。ぼりぼり。

「なんかぼそぼそしてて美味しくない」
 勝手に食っておいて何たる言い草でしょう。
 するとどうしたことか周りの家具や植物がぐんぐんと育ち始めました。アリスは眼をまん丸にします。
「うわぁ、なんってファンタジー……ってちょっと待った」
 アリスはぐるぐるとあたりを見回して、最後に自分の手を見ます。そして驚きの余り飛び跳ねました。

 私が小さくなってるんだ!

「えっと」
 アリスは深呼吸をします。混乱するのも無理はありません。おばあちゃんでもあるまいし、まさかこんな年で縮むとは思いもよりませんでしたから。

「ミニモニ入れて、ら、ラッキー?」
「入れるとでも思ってるのですか。厚かましい」
 冷たいツッコミを入れたのはあのこにくたらしい峰藤とかいうウサギです。彼は扉の近くに立ち腕を組んだままアリスを高圧的な態度で見ています。
「先ほど扉を蹴ったのは貴方ですね。他人の家の扉を足蹴にするとはどういう神経してるのですか。あぁ、言わなくても結構です。どうせ程度はしれてますから。これは立派な器物破損です。何か反論でも?」
「スンマセン!」
 謝ったら負けだということは解っていましたが、アメリカンでもなかったアリスはあっさりと謝ってしまいました。口答えをしたら三十倍ぐらいになってかえってきそうでした。
「謝るぐらいなら幼稚園児にでも出来ます。誠意を見せていただけますか」
「……と、いうと?」
 いやぁな予感がしながらも、おそるおそる尋ねてみると、峰藤ははっきりといいました。

「そうですね――身体で払っていただきましょうか」

 もはやエロゲーでさえ言わなさそうな台詞を吐いた峰藤にアリスは凍りつきます。あぁ、このまま十八禁な展開に進んでしまうのでしょうか? 




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